第27回定期演奏会に寄せて
今年の初めには誰も想像していなかったであろうコロナ禍の中、亡くなられた方々に心より哀悼の意を表します。また、皆さまにおかれましても不自由な、そして不安な日々を過ごされているものと存じます。
そんな中、私たち志木フィルハーモニー管弦楽団は、9月20日に、第27回定期演奏会を開催する決断をいたしました。
当団は、5月25日の緊急事態宣言解除直後の6月から少人数での練習を再開しました。その時点では、活動がもう続けられないのではないかという懸念と、演奏会を諦めるべきではないかという迷いを、メンバーの誰しもが感じていた筈です。
様々な不安を感じつつ、活動再開後の初めての練習で取り上げた曲は、ブラームスの交響曲第1番第2楽章でした。メンバーも揃わず、決して上手な演奏ではなかったのですが、それはひたすら美しい音楽でした。私は涙を禁じ得ませんでした。この時、何とか演奏会を開きたいという方向性が定まったように思います。
動き出しては見たものの新型コロナウィルス感染症対策を始めとして、課題は山積みでした。全国のオーケストラが次々と演奏会の中止、延期を決める中で、果たしてメンバーが集まるのかすらわかりませんでした。また、演奏会の開催についてお叱りを受けるのではないかという懸念もありました。
種々の事情から参加を断念せざるを得なかったメンバーもいます。一方で、新たに参加してくださった方々もあり、演奏の形は整えることができました。また、演奏会を告知した時、心配していた批判やお叱りはなく、逆に励ましや、演奏会を楽しみにしていますといったメッセージを頂き、身が引き締まる思いでした。
昨今、アフターコロナという言葉をよく耳にしますが、それは病に怯えてひっそりと暮らすことではない筈です。日々の生活を豊かにするもの、それは人によってはスポーツであったり、旅行であったりするわけですが、そうしたものも含めての“アフターコロナ”であるべきでしょう。今そのあり方が模索されています。
我々に何ができるのか。当団は地元を持つ市民オーケストラです。言わば、この志木という“ふるさと”に育てて頂いた団体です。であるならば、音楽という手段を通じ、今はコロナ禍で停滞してしまっている地元の“文化”の火を灯し続けることが、我々のできることではないかと考えています。
今回演目として取り上げたブラームスの交響曲第1番は、奇しくも“暗黒から光明へ”というモチーフを持つ曲です。今回の定期演奏会は、少なくとも埼玉県下では、アフターコロナで初めてのアマチュアオーケストラが行うコンサートだと思われます。先駆けという役割は当団には荷が重いのですが、このブラームスのシンフォニーの演奏を通じて、立ち止まってしまった”文化“の再興を祈念たいと思います。
9月20日の演奏会では、お客様、演奏メンバー、手伝ってくださるスタッフの方々も含め、皆様と共有する時間をたいへん楽しみにしています。我々は、参加が叶わなかった団員の思いも含め、今できる精一杯の演奏をいたします。
最後となりましたが、演奏会の実施に関し様々な労を取って頂いた当団団長に感謝いたします。
志木フィルハーモニー管弦楽団
常任指揮者 山本宏一
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